断熱・省エネ

更新日:2025年03月14日

パッシブソーラーハウスで無理なく省エネ

掲載日:2017年10月5日

写真:
太陽熱を住宅の中で上手に生かして、省エネに取り組んだ家をソーラーハウスといいます。アクティブソーラーハウスは、太陽光発電などを利用して積極的に太陽のエネルギーを利用した住宅。これに対してパッシブソーラーハウスは、機械を使わず設計に工夫をして、太陽エネルギーの恩恵にあずかった住宅です。ファンなどごく小規模の機械を入れたパッシブソーラーハウスもあります。

パッシブソーラーハウスとは?

写真:パッシブソーラーハウスとは?

もともと日本の家は自然のエネルギーを利用してきました。代表的なのが、縁側。暑い夏は太陽の日差しを遮り、寒い冬は日差しを室内に取り込めるようにしていたのが、縁側と深い軒です。夏の太陽は高い位置にあり、夏至の日の日差しの角度は約78度、冬は逆に太陽の位置が低く、冬至の日の日差しの角度は約30度。軒の出を深くすることで日差しの角度の差を上手に利用し、夏の日差しは遮り、冬の日差しは室内に導いてきました。このように太陽の恵みを上手に利用しているのが、パッシブソーラーハウスです。冬の縁側は、太陽の熱を蓄えてポカポカしており、日なたぼっこをするのにはうってつけの場所。さらに部屋の床などに石やレンガなどの蓄熱性がある材を敷くと、冬の日差しを蓄熱して夜も暖かく過ごせます。このように、日差しを利用して蓄熱をすることを「ダイレクトゲイン」といいます。

一方、太陽光発電など機械を使って、太陽のエネルギーを利用するのが、アクティブソーラーハウスです。アクティブソーラーハウスでは、太陽光発電のほか、電気を蓄電する蓄電池(電気自動車も含む)、電気をコントロールするHEMS(ヘムス=ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)を同時に採用したスマートハウスがあります。また、自然の力を生かした構造にし、小規模の機械で空気を循環してより快適に過ごせるように工夫した住宅もパッシブソーラーハウスと呼んでいます。

窓に工夫をして、冬の日差しを取り込む

写真:窓に工夫をして、冬の日差しを取り込む

パッシブソーラーハウスには、以下のような工夫がなされています。まず、住宅そのものに断熱性があり、外気の影響を受けにくい構造であること。夏の日差しを遮り、冬は日差しを室内に取り込む工夫が施されており、蓄熱材により夜間も快適な室温に保てること。風の通り道を考え、風が通り抜けることにより、夏の室内を涼しく保つこと……などです。また、光をうまく室内に取り入れることは、冬の日差しの恩恵にあずかって暖かく過ごせるばかりでなく、明るく開放的な暮らしが実現できるというメリットも。光を取り入れることでまず考えたいのが中庭です。特に、住宅密集地でプライバシー確保のために多くの窓がつけられないときにおすすめ。中庭に大きな窓をつけることで家の中にたっぷりの日差しを取り込むことができます。壁づけ窓の3倍の採光量がある天窓も効果的。ただし、夏は暑くなるので天窓用カーテンやブラインドをつけて遮熱しましょう。リモコンで開閉できる電動式タイプもあります。

庭に落葉樹を植えるのも、太陽光を利用する方法の1つ。夏は葉が生い茂る樹木が強い日差しを遮り、冬は落葉樹の葉が落ちるので、家の中まで日差しが届きます。また、屋外にタイルやコンクリートでテラスを作る場合は要注意。夏の太陽の照り返しや、タイルなどに蓄積された熱が放射して、居室が暑くなります。芝など蓄熱しないものにすると良いでしょう。

夏場、車の中はとても暑くなっており、買い物から帰ってあまりの暑さにクーラーをガンガンかけて乗り込むという人もいるでしょう。炎天下の車内温度は50℃を超えていることも。ガレージの場所によっては、熱くなった車の屋根からの照り返しが居室の室温に影響を与えることもあります。

ファンを使って、太陽のエネルギーを生かす

写真:ファンを使って、太陽のエネルギーを生かす

パッシブソーラーハウスの中には、ファンなどの最小限の機械を使ってより効率的に太陽のエネルギーを取り入れるシステムもあります。仕組みは、屋根に集熱面、壁に屋根から床下に暖気を送るダクト、床下に蓄熱層、床に熱の吹き出し口を設置。屋根の集熱面で集めた暖気をダクトで床下の蓄熱層に送ります。このとき、ファンで暖気を送りますが、電気代は電球1つ分ほどと省電力。蓄熱層の暖気が、床の吹き出し口から室内に流れるようになっています。基本的に冬の暖房に効果を発しますが、夏は熱気を室外に逃がして涼しくなるように工夫されているのも特徴。お湯を同時にわかせるタイプのほか、太陽光発電と併設できるタイプも。このようなパッシブソーラーハウスを作っているメーカーは、環境創機、OMソーラーハウス、エアサイクルハウジングなどです。

●冬の働き(日照がある場合)
屋根の下にある集熱面で太陽の熱を集めます。ファンを使ってダクトで暖気を床下の蓄熱層に送ります。床の吹き出し口から暖気を放出するほか、あたたまった蓄熱層が低温床暖房の働きをします。

●冬の働き(日照がない場合)
屋根の下にたまったストーブなどの暖房の熱をリターン口で回収し、ダクトを通して床下の蓄熱層に送ります。家全体が均一なあたたかさになります。

●夏の働き(日中)
熱せられた屋根の下の空気をファンによって屋外に排出します。部屋の熱気だまりがなくなることにより、快適な室温を保ち、エアコンもよく効きます。

●夏の働き(夜間)
放射熱により集熱面が冷たくなります。ダクトを通して冷やされた空気を床下の蓄熱層に送ります。冷えた空気が室内に放出されるので、涼しく過ごせます。


画像:冬の働き(日照があるとき)(そよ風/環境創機株式会社)

写真:

よかったらシェアしてね