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更新日:2024年10月02日
介護保険法に基づく住宅改修で介護に優しい住まいづくりを
ご家族の介護が必要になってきたので、快適に暮らせるようご自宅をリフォームしたいと考える方も多いのではないでしょうか。しかし、ご自宅を介護仕様にリフォームするとなると費用負担も大きいかもしれません。そんなときにぜひチェックしてほしいのが、「介護保険制度に基づく改修費用の支給」です。ここでは、介護保険の住宅改修の基本的な仕組みから実際の申請方法までを分かりやすくご案内していきます。
介護保険法とは
介護保険法とは、介護および支援が必要である人に対して、介護に要する費用の一部を支給することについて定められている法律です。介護保険は市区町村が運営し、40歳以上に加入が義務づけられている公的な社会保険制度で、対象となる人に介護サービスを行います。
これだけを聞くと、体が不自由になった際などに、自分が介護を受けるための保険だと認識してしまいがちですが、ご家族の介護が必要になってきた際の居住環境をより良くするために行う住宅改修の費用も介護保険に基づく支給対象となる場合がありますのでチェックしておきましょう。
介護保険での住宅改修のメリット
まず、介護に適した環境づくりのために改修工事を行うメリットについて確認しましょう。
介護保険を利用して住宅改修を行うメリットは、次の3つが挙げられます。
①自宅介護の負担を軽減できる
護しやすい環境を整えることで、介護をする家族や親族の負担やストレスを軽減します。
②被介護者の自立度の向上を促す
介護される人が身の回りのことを継続して行いやすいようにします。
身の回りのことを行うことは、身体機能の向上や維持、認知機能の低下の防止などにも役立つと言われています。
③住宅改修にかかる費用を削減できる
費用負担を抑えられるため、住宅改修へのハードルを下げ、介護が必要になった際にも住みなれた家で暮らし続けやすくなります。
介護保険での住宅改修の対象者、支給額について
介護保険での住宅改修は無条件でできるわけではありません。
適用条件や対象工事の詳細は、制度の窓口となっているお住まいの市区町村の担当窓口への確認が必要となりますが、ここでは制度の基本的な仕組みや対象者、支給額をご案内します。
①対象者
住宅に関する改修に伴う支給対象者は、介護保険法にて定義づけられている要支援1から2と要介護1から5のいずれかにおいて認定されていなければなりません。また、介護保険被保険者証に記されている自宅に居住していることも条件となっています。
要支援1から2と要介護1から5に認定されている介護保険被保険者でも、介護保険施設に入所している場合や病院に入院中の場合、自宅ではなく一時的に住んでいる住宅にいる場合は支給の対象とはなりませんので注意が必要です。
なお、介護施設からの退所や医療施設からの退院が決定していて、その後、居住するご自宅を改修するのであれば支給対象となる場合もありますので、具体的な相談は市区町村の担当窓口に問い合わせましょう。
②支給額
介護保険の対象となる住宅改修をした場合、費用の7割~9割が介護保険から支給されます。支給の割合は支給対象者の所得に応じて変動します。
住宅改修における利用限度額は、要介護区分に関係なく、20万円が限度となります。
例:住宅改修のため20万円の工事を行った場合
1.介護保険支給割合9割の対象者:18万円までが支給対象⇒被保険者が負担する費用は2万円
2.介護保険支給割合8割の対象者:16万円までが支給対象⇒被保険者が負担する費用は4万円
3.介護保険支給割合7割の対象者:14万円までが支給対象⇒被保険者が負担する費用は6万円
改修費用が20万円を超える場合は、超過した費用は全額自己負担となりますのでご注意ください。
地域によっては独自の住宅改修補助制度を設けているところもありますので、市区町村の担当窓口に問い合わせましょう。
また、支給は、原則「償還払い」とされます。「償還払い」とは、対象となる工事費用の全額をいったん事業者へ支払い、申請により後で規定の額が払い戻される仕組みのことをいいます。ただし、「受領委任払い」を選択することもできます。「受領委任払い」は、介護保険における住宅改修費の支払いの際に、自己負担分の費用だけを利用者が事業者に支払い、保険給付対象の7~9割分を利用者からの委任に基づき自治体が事業者に支払う制度です。受領委任払いを利用するには、利用するための条件があり、該当しない場合があるので、注意が必要です。「受領委任払い」を適用できるかについては市区町村の担当窓口に必ず確認しましょう。
③分割利用
介護保険の対象となる支給限度額は、原則一人につき一回で20万円と定められていますが、1回の改修工事での受給額が20万円に満たなかった場合は、残りの金額をまた別の改修工事で申請することができます。
④支給基準額利用回数の例外
介護保険の住宅改修費の支給限度額は、上限20万円と定められており、上限に達すると支給は終了します。ただし、次のような条件に該当すれば再度20万円まで利用できることがありますので、介護の状況に応じて再び改修工事を行う際は、ぜひ参考にしてください。
要介護状態の悪化
介護保険を使って初めて住宅改修をした時の介護区分から3段階上るなど、要介護として認定されていた区分から3段階以上重度になるなど身体の状態が悪化した場合においては、一度限りの限定的な措置ですが改めて20万円を上限として受給することが可能です。
転居
住宅に関する改修とは、現在居住している住宅が対象となります。従って、転居した住まいで改修を行う場合は、新たに居住する住宅に住民票が移されていれば介護保険の住宅改修の支給対象となり、改めて20万円を上限として受給することが可能です。
なお、転居した先の住宅が新築であった場合は、「住宅改修」の概念に当てはめることができませんので支給対象外となります。
対象工事について
厚生労働省によって、介護保険の住宅改修費の支給対象となる工事の種類は以下①~⑥の6つと定められています。
① 手すりの取り付け
廊下・玄関・階段・トイレなどにおいて手すりを設置する工事です。移動しやすくしたり、転倒を未然に防止したりする効果が期待できます。手すりは、二段式・縦付け・横付けなどいろいろな形状がありますので、使用者にとって最適な形状を検討し選びましょう。
② 床材を滑りにくいものに変える
リビング・階段・浴室などにおいて使用されている、滑りやすい床材に対して滑り防止効果が高い床材に変更する工事です。和室の畳敷きから板製床材やビニル床材に取り替えるなどの改修工事が該当します。また、車椅子の使用が容易となるよう畳の床材をフローリングへと変更する工事も対象となります。
ただし、ベッドを設置することを目的としたフローリングなどへの改修は支給対象外ですのでご注意ください。
③ 扉の取り替え
開き戸を引き戸や折戸、アコーディオンカーテンなどに変更する住宅改修の費用は支給対象となります。扉の全体の取り替えだけでなく、握力が弱くなると開閉しにくいドアノブの変更や扉を動きやすくするための戸車設置も同じく支給対象です。
④ 段差の解消
リビング、廊下、トイレ、浴室など部屋と部屋の間の段差解消や玄関から道路までの傾斜解消を実施するための工事を差します。具体的には、移動をしやすくするためにスロープを設置したり、転倒防止のために敷居を低くしたり、浴室の床をかさ上げしたりする工事が該当します。
⑤ 和式から洋式トイレにする
和式トイレから洋式トイレへ変更する工事です。トイレの使用時の立ち座りの動作は、利用者への負担が大きいため、その負担を軽減、改善することを目的としています。また、和式から洋式の様式変更だけではなく、現在使用している洋式トイレについて、さらに立ち上がりを容易にするタイプの洋式トイレに変更する工事も対象となります。
なお、腰掛便座や暖房機能、洗浄機能の付加価値を付ける工事は支給対象外ですのでご注意ください。
⑥ ①から⑤の工事に伴い必要となる住宅改修
上記①から⑤の工事の際に必要となる改修費も支給対象です。
例:手すりを設置する際の壁の下地補強
住宅改修費用の申請方法
重要なポイントは、介護保険住宅改修費の受給には「工事前の申請が必要」という点です。
介護保険法に基づく住宅改修の支給を受けるまでの一般的な流れは以下のとおりです。
- 親族やケアマネージャーなどに相談しながら施工会社を選定
- 施工会社によってご自宅の事前調査および改修に伴う見積書の受領
- 市区町村の担当窓口へ事前申請書類を提出
- 工事施工・完成
- 市区町村の担当窓口へ住宅改修費の支給申請
- 決定・受給
介護保険法に基づく住宅改修に伴う申請は、お住まいの市区町村の担当窓口で行います。
介護保険、介護リフォームに関するお問い合わせは、現在お住まいの市区町村の担当窓口までご連絡ください。
まとめ
ここまで、介護保険の住宅改修の基本的な仕組みから実際の申請方法の概要までを簡単にご説明させていただきました。
介護保険を利用した住宅改修では、改修工事に必要となる費用を支給してくれる制度となっています。経済的な負担を軽減できますので、介護リフォームを検討される際は、まずは、お住まいの市区町村の担当窓口へ問い合わせてみましょう。
そして、介護リフォームの実施には介護リフォームの施工経験が豊富なリフォーム業者を選ぶことが重要です。施工実績や資格者の有無を確認し、ケアマネージャーとも相談しながらリフォーム計画を進めましょう。
参考:厚生労働省「介護保険制度について(40 歳になられた方へ)」
*全国の登録事業者が表示されますので、お住まいのエリアに絞って検索ください。
(2021年12月3日掲載)
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