リフォームを学ぶ | 介護・バリアフリー

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更新日:2021年10月08日

ほしいもの、いらないもの、部屋環境の整え方

あたたかい光はほしい、道路からの騒音は、勿論いらない。
高齢期になると自宅で過ごす時間が長くなります。同時に心身機能は徐々に衰え、少しの差が大きく感じられるようになってきます。そこで、光・音・臭い・湿気といった部屋の環境を整えることが大切です。体と気持ちの快適性にとても影響します。
今まで気にはなっていたけれど我慢していたこともあるのでは?せっかくリフォームするなら、居心地よく変えましょう。

光と風と眺め、自然の恵みは最大限に

写真:光と風と眺め、自然の恵みは最大限に
窓の役割とは何でしょうか? それは採光と通風、そして眺望です。冬のあたたかな陽射しはできるだけ取り入れ、夏の厳しい日差しは避けたい。夏は可能ならばエアコンに頼らず風を通して過ごせたら理想的、勿論冬の北風は防ぐ。部屋の中から外の緑が望めるならば広く開きたいが、通行人の視線は遮りたい。つまり住まいというのは、自然や周辺環境のいい所取りをしたいものであり、そしてパッシブすなわち電気・ガスなど設備に頼らないことが好ましく、その代表となる部位といえば窓であります。

リフォームでは、窓自体を新たに設けることも構造によってできなくはないですが、採光・通風・眺望の調節という点では、カーテンやブラインドで補うことが一般的です。効率的に遮光しながら通風は確保できる外付けのブラインドや、防犯も兼ねたシャッターで通風ができるタイプもあります。昔ながらの障子は、日差しをふんわりとやさしく取り入れ、視線を遮り、開閉も容易です。夏場の日差しを避けるためには、庇の取り付けや、テント生地のオーニングを設置する方法もあります。例えば小分けにしてあったことで風が通らなかった部屋の間の壁を取り払うことで、明るさが届き、風の入口と出口ができて通るようになるケースもあるでしょう。機械設備に頼り切るのではなく、できるだけ自然の要素を調節する工夫をすることで、体への負荷・ストレスを減らせます。

リフォームの場合、依頼先の設計者よりも誰よりも光の入り方や風の流れを知っているのが住まい手、皆さんです。朝から晩まで、季節によって、どんな具合かをまずは話して、良いところ、困ったところを伝えてください。

防臭、調湿、吸音など素材選びで快適に

写真:防臭、調湿、吸音など素材選びで快適に
リフォームに使う素材を、どのくらいご存知でしょうか? ビニールの壁紙が多い壁や天井ですが、その他の素材もちょっと検討してみてはいかがでしょう。例えばいまや高価なものになりましたが、左官職人さんによる塗り壁。昔ながらの漆喰や、広く知られるようになったものの割と日本での歴史は浅い珪藻土は、極小の孔が臭いの元となる物質を吸着・分解し、湿った時期には湿気を蓄え、乾いた時期には吐き出す調湿性能を備えています。和紙の壁紙にも調湿性能があり、心配される撥水性をプラスした商品なども出てきており、ビニール壁紙に近い施工のしやすさで価格を抑えたものもあります。湿度が低すぎると口や鼻の粘膜が乾燥して体の防御機能が低下しますし、肌の水分量が減り痒みの原因にもなります。逆に湿度が高すぎると不快感だけでなく、発汗作用に不調をきたし自律神経に影響が及ぶこともあります。加湿・除湿を設備だけでなく内装の素材も併せて計画することで、体調を整える助けになってくれます。

また、騒音対策では、既存の窓の内側にもう一つの窓を設置することや壁中の下地に入れる断熱材グラスウールなどは断熱性能の向上と同時に吸音に有効です。壁に張る板を二重にして間に鉛のシートを挟み込む方法もあります。視覚や認知の機能が低下すると音がより重要な手がかりになりますので、できるだけ騒音をなくす配慮が大切です。

戸建てかマンションか、どの程度の予算でどの程度のリフォームを行うか、一番優先したいことが何かはそれぞれですが、まずは、こうなったらいいな、と思われることを、全部依頼先に伝えてみてください。表面や下地の素材の選び方で解決できることもあるはずです。貴重な予算を素材に使うか、設備に使うか、専門家に相談しながらゆっくり進めていきたいものです。

明るいだけじゃない、安らぎの照明計画

写真:明るいだけじゃない、安らぎの照明計画
高齢で文字が読みにくくなってきたから、照明はとにかく明るく、と考えられる方は多いですが、果たしてそれだけで良いでしょうか。確かに、本や新聞を読むときには若い時よりも高い照度が必要とされるでしょうが、ずっと文字を追いかけているわけではありませんし、本当に必要な部分だけを明るくすれば良いかもしれません。ゆったりくつろいでお茶を飲んでいる時、明るすぎる環境は何となく落ち着かずストレスを増やします。

例えば天井にシーリングライトを1台だけ設置するのではなく、壁に取り付けるブラケットライト、床に置くスタンドライトなど複数の照明を組み合わせることで柔らかい雰囲気が作れます。少し手の込んだリフォームになれば間接照明を作って器具を見せずに光だけを得ることもできます。LED照明はどんどん高機能・低価格化が進み、明るさを変える調光だけでなく、白い色からオレンジがかった色へと色味を変えられる調色ができる器具も一般的になってきました。

部屋の機能によって求められる明るさが違います。洗面所はやはり明るいほうが良いでしょうし、リビングや寝室では過ごしやすく落ち着いた雰囲気を作りたいものです。もちろん、日中窓から入る自然の光だけで過ごせる時はそれが最適です。一番明るさが必要とされる場面を基準にしていつも一定に保つのではなく、必要な時に必要なだけの明るさに調整するくらいの手間はかけても良いのではないでしょうか。一度ショールームに足を運んで、ゆっくり色々な照明プランを体験してみるのはいかがですか。

上手に人口の照明と採光を計画して、自然のサイクルに近い状態にしておけば、視力の低下を補い、体のリズムを整え、睡眠の質を向上するのに役立ちます。

執筆者情報

写真:執筆者情報
古屋 英紀さん/一級建築士(住まいのナビゲーター)

2006年より一級建築士事務所を設立、主宰。戸建住宅の新築、建て替え、リフォームの設計に携わる。2012年より(一財)住まいづくりナビセンターの住まいのナビゲーターとして住宅相談、セミナー講師を担当。
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