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介護・バリアフリー
更新日:2024年10月03日
バリアフリー住宅とは?メリットは何?誰もが快適に暮らせる家づくりのポイントを紹介
掲載日:2022年8月24日
高齢の方、介護が必要な方、また身体機能に障がいがある方が、安全で暮らしやすい生活を送ること。それらを考慮して設計された住宅を「バリアフリー住宅」といいます。
これから家を建てる方、また将来を見据えてリフォームをする方に、バリアフリー住宅とはどのようなものなのか、バリアフリー住宅にするメリット、バリアフリー化するために必要なポイントなどを解説します。
バリアフリー住宅とは
バリアフリー住宅とは、言葉の通り「バリア(Barrier 障壁)」のない住宅のこと。高齢者や要介護者だけでなく、小さい子どもをはじめとするすべての年代の人誰もが、安全・安心・快適に生活できるよう設計された住宅のことです。
具体的な例を挙げると、以下のような住宅がバリアフリー住宅と呼ばれています。
段差を解消し、ゆるやかなスロープが設置されている家
車椅子が無理なく通れる、広い通路が確保されている家
開閉や出入りがしやすい、引き戸の家
部屋と部屋の間や廊下との室温の差をなくし、ヒートショックによる事故を起こさない家
高齢者や障がい者だけでない、すべての人に快適な家
「バリアフリー」とは、高齢者や障がいを持つ方だけではなく、どのような年代や身体状況になっても障壁を感じることなく生活できる状態を指します。
室内の移動がしやすいバリアフリー住宅は、小さな子どもや妊娠中の方や、足腰のケガや病気などで一時的に杖や車椅子を使って生活する方でも快適な暮らしができます。
高齢者や障がいを持つご家族がいない家にとっても、バリアフリー住宅にすることはメリットが大きいといえるでしょう。
また、高齢期に健康で快適に過ごすためにも、早めにバリアフリー住宅にしておくことはメリットがあると言えます。
家族の状況によって、バリアフリー化の内容が変わる
バリアフリー住宅を考える上で、その家に住むのがどのような人なのか、将来どのようなものが障壁になりうるのかを、しっかり考える必要があります。住む人の人数や年代、家族構成から、将来、起こりうる障壁を想定することで、バリアフリーの内容は大きく変わります。
たとえば、子どもが既に大きくなっていて、高いところから転落する可能性が低い場合、柵を設置するというバリアフリー化は優先度が低くなります。
しかしながら、現状で車椅子を使用する家族がいない場合でも、将来的に車椅子を使用する可能性は大いにあります。これから新築をする場合やリフォームを検討する際は、廊下の幅を広くとったり、トイレや浴室など屋内の段差をなくしたりすることを検討してください。
なお、手すりなど、後からでも取り付け可能なものは、将来に備えてあらかじめ下地を設置しておくと安心です。
いざという時に可能な余地を残しつつ、優先度を決めて、自分の家に必要なものを選んでいきましょう。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーと似た言葉に「ユニバーサルデザイン」があります。ユニバーサルデザインとは、年齢や障がい、性別、体格、国籍、言語に縛られずに、誰もが理解しやすく・使いやすくなっているデザインを指します。
たとえば、文字が読めなくてもイラストなどで進行方向を判断できるデザインの標識や、多言語表記があらかじめ設定されている案内板などは、ユニバーサルデザインです。
住宅において、バリアフリーもユニバーサルデザインも住む人にとって安全で快適な家づくりの考え方ですが、ユニバーサルデザインのほうが、その言葉の意味する範囲が広くなります。
多国籍の人が同居する、視覚や聴覚などに障がいがある、などの場合には、より多くのバリアを排除したユニバーサルデザインを取り入れることも必要です。
バリアフリー住宅のメリット
バリアフリー住宅は、高齢者や障がい者だけでなく、すべての人の暮らしをより安全で快適なものにしてくれます。
ここでは住宅をバリアフリーにすることのメリットを、5つのポイントから解説していきます。
(1)室内での転倒事故を防止できる
健康なときには特に意識をしていなくても、室内には様々な危険があります。消費者庁 からは、転倒事故の約半分は自宅で発生しており、通院や入院が必要になるなどの深刻な状況も多いと発表されています。
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[転倒事故の発生場所]※上位5つ
■浴室・脱衣所 ■庭・駐車場 ■ベッド・布団 ■玄関・勝手口 ■階段
[転倒事故の状況]※上位5つ
■滑る ■つまずく ■ぐらつく ■ベッド等から移動時に ■引っ掛かる
高齢になり身体機能が衰えると、ちょっとした段差でつまずいたり、転倒しても起き上がれなかったりすることが増えます。小さなケガが元で寝込み、そのまま回復できない場合もあります。
もちろん室内での転倒は、加齢や障がいの有無に関係なく起こります。浴室など滑りやすい場所には予め対策を講じておくことで、安心して生活することができます。
[転倒事故を防ぐポイント]
階段に滑り止めを設置する
通路や階段に手すりを配置する
玄関や浴室の床を滑りにくい素材にする
(2)生活動線を改善できる
生活動線とは、住宅内における生活の動きを、線として捉えたものをいいます。
たとえば居間やリビングなどから浴室へ向かうまでの移動経路や、洗濯機から洗濯物を干すベランダまでの道のりなどが生活動線に当たります。
バリアフリー住宅は、車椅子や杖を使用している方でも動きやすく、生活しやすい住宅
です。そのため、必然的に生活動線をスムーズにすることが求められます。
洗濯物を干すために洗面所とベランダを何往復もする必要があったり、浴室に入るために人が多いリビングを横切らなくてはならなかったりするのでは、生活動線が良いとは言えません。無駄な動きは転倒事故につながりますし、また家事が負担になって生活が不自由になります。
生活動線のバリアをなくすことは、すべての人の生活を便利にしてくれます。
(3)移動や動作がしやすくなる
バリアフリー化と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、車椅子が通れる広い玄関や廊下、車椅子でも入れるトイレ、という方も多いのではないでしょうか。
廊下やトイレ、洗面所、浴室など、日常生活ですべての家族が頻繁に利用する場所に余裕を持たせることで、室内事故の防止になるだけでなく、日々快適に過ごせるようになります。
また、年齢を重ねると、しゃがむ・立つなどの単純な動作でも体への負担が大きくなるため、これらの負担を解消するための設備や機能はいずれ必要となります。
例えば、トイレや浴室は十分なスペースを確保しておくことで、将来手すりを設置しても狭くならず快適に使えるようになります。
廊下や居室など歩行などの動作が必要な場所も、手すりを設置したり、車椅子が通れる幅にしたりすることで、将来的に体への負担軽減につなげることができます。
(4)温度差による「ヒートショック」を防ぐことができる
「ヒートショック」とは、気温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こることを指します。
住宅内でのヒートショックの原因となるのは、暖かいリビングや居室から、暖房のされていない廊下、トイレ、脱衣所や浴室に移動する際の温度変化です。
特に高齢になると、家の中での急激な温度差により血圧が急変動を起こし、失神や心筋梗塞、脳梗塞といったヒートショックを起こす危険が高まります。
ヒートショックの対策は、家の中の温度差を少なくすることです。室温が高すぎる部屋や室温が低すぎる部屋をなくし、部屋と部屋の間の温度差をなるべく小さくすることで、ヒートショックが発生するリスクを減らしましょう。
窓を二重にする、脱衣所やトイレに暖房設備を設ける、壁材や床材、外壁に断熱性が優れた素材を選ぶなどの対策で、温度差によるヒートショックを防ぐことができます。
(5)介護者と要介護者、双方の負担を減らすことができる
加齢や障がいによって、トイレや食事、入浴、室内の移動など生活の全般に渡って介護が必要になったとき、バリアフリー住宅であれば介護を行う人と要介護者の双方が快適に生活しやすい環境が整えられ、要介護者が感じる負担と、介護を行う人が感じる負担の両方を減らすことができます。
トイレであれば、出入り口とトイレ内の間取りを広く取り、二人がトイレに入ることができ、介護を十分に行えるだけのスペースを確保しておくと良いでしょう。
浴室では、体を洗う、浴槽に入るなどの動作を楽に行うための設備やスペースがあれば、介護を受ける人も介護をする人も安全です。
介護用の機能が充実したトイレやユニットバスを導入することも、双方にとって効果的です。
住宅をバリアフリー化する際のポイント
玄関、キッチン、リビング、寝室、トイレ…。住宅のバリアフリー化を進めるためには、どの場所にどのような設備や機能を備えると良いのでしょうか。
独立行政法人国民生活センターによると、2010年12月から2012年12月末までの約2年間に医療機関ネットワー クへ報告された65歳以上の高齢者の家庭内事故のうち、「居室」が45.0%、「階段」が18.7%、「台所・食堂」が17.0%、「玄関」が5.2%、「洗面所」が2.9%、「風呂場」が2.5%、「廊下」が2.2%、「トイレ」が1.5%でした。
これらの事故を防ぐために、住宅のどこをどのようにバリアフリー化すると効果的なのかを解説していきます。
リビング・ダイニング
バリアフリー住宅のポイントの一つに「段差をなくす」ことがあります。家族が長時間を過ごすリビングやダイニングは、特に小さな段差でも徹底的になくすことを意識しましょう。
廊下からリビングに入る扉やその付近に少しでも段差があると、高齢者に限らず、誰でもつまずいてしまう危険があります。
また、リビングのソファやダイニングテーブルの近くに手すりがあると、立ったり座ったりといった動作が楽になります。
キッチン
キッチンのバリアフリー化を考える際には、設備、機能を使いやすくする工夫と必要なスペースの確保を考えること、この二点が重要です。
棚を手の届きやすい場所に配置する
高齢者や手足に障がいがある場合は、長時間立っての作業が辛くなります。また、車椅子に乗ったままでも調理をするためには、調理台や棚の高さを考慮する必要があります。座った状態でも調理ができるよう、よく使用するものは手がとどく高さの棚に収納する、背伸びや踏み台が必要な高い場所や、腰をかがめなくてはいけない低い場所にはあまりものを置かない、などの工夫が必要です。
立っているときでも座っているときでも収納へのアクセスを良くしたいときの解決策としておすすめなのが、昇降式の吊戸棚を導入することです。単純に収納量が増えるだけではなく、作業動線をスムーズにできるメリットがあるため、使いやすいキッチンレイアウトを実現できるでしょう。
キッチンのスペースを広く設定する
一般的にキッチンの通路は、あまり広くありません。しかし、椅子に座ったり車椅子に乗ったり、また介護者と一緒に調理をする場合は、広いスペースが必要になります。
調理中の事故を防止するためにも、キッチンのスペースは広めに設定しておきましょう。
掃除・メンテナンスがしやすいものを選ぶ
調理の負担を減らすために、食洗機やディスポーザーなどを活用する方も多くいます。それらを選択する際に、機能はもちろんですが、「掃除・メンテナンスのしやすさ」という観点でも選んでみましょう。高齢になるにつれて、ちょっとした家事でも大きな負担になります。毎日使うものはできるだけ手入れが簡単なものを選んでおくと、日々の生活が楽になります。
またキッチンの床や壁は、丈夫で汚れに強いものを選びましょう。液体をこぼしてもすぐに拭けてシミになりにくいなど、メンテナンスの観点から内装を選ぶことで、家事への負担が少なくなります。
浴室
浴室は水で濡れていることが多いため滑りやすく、転倒事故が起こりやすい場所です。また、浴室は寒暖差によるヒートショックを引き起こす危険があります。
床のタイルを滑りにくいものにする
浴室の床を水はけのよい、滑りにくい素材にすることで、転倒のリスクを減らすことができます。
浴室と脱衣所の段差をなくす
脱衣所と浴室で段差があると、つまずきや転倒のリスクがあります。すのこやマットなどを使用して簡易的に段差をなくすこともできますが、メンテナンスが大変になるというデメリットもあるので、設計段階から考慮すると良いでしょう。
保温性・断熱性を高める
浴室が寒いと、寒暖差によるヒートショックのリスクが高まります。保温性の高いユニットバスや断熱性の高い窓を選ぶことで、温度差を少なくしましょう。浴室暖房があれば、早めにスイッチを入れておくこともおすすめです。浴室暖房がない場合は、浴槽のふたを開けたり、シャワーからお湯を出したりすることで浴室内を温めることができます。
壁や浴槽の近くに手すりを配置する
滑りやすい浴室には、特に手すりが必要です。また、高齢者の立ち座りが安全にできるよう浴槽にも手すりを設置すると良いでしょう。
脱衣所・洗面所
脱衣所や洗面所は、一般的にはあまり広いスペースではなく、置いてある物も多いため身動きが取りにくい場所です。
また脱衣所は部屋との温度差が大きくなりがちで、ヒートショックを引き起こす危険もあります。
車椅子でも使用できる洗面台にする
一般的な洗面台は、洗面ボウルの下部が棚になっているため、車椅子に乗った状態では膝がぶつかってしまいます。
洗面台の足元に空間があれば、車椅子でもスムーズに使用することができます。
また高齢者は腰をかがめる姿勢が辛くなるので、洗面台の高さについても配慮が必要です。
ドアを「引き戸」にする
洗面所に限らず、特に狭いスペースのドアは引き戸にすることで、動作スペースを確保できます。また力の弱い高齢者でも、少ない力でドアの開閉ができます。
脱衣所に暖房器具を設置する
部屋との温度差が大きくならないよう、ヒーターなどの暖房器具を設置し、入浴前に暖めると良いでしょう。
トイレ
一日に何回も使用するトイレは、特にバリアフリー化しておきたい場所です。広さはもちろんですが、いかに足腰への負担が少なく快適に使用できるか、汚れた時の後処理を容易にできるか、などがポイントになります。
介護が必要な場合は、スペースを広くする
介護者と一緒にトイレを使用することも考慮し、便器回りのスペースをあらかじめ広くしておきましょう。
便器の近くに手すりを設置する
便器の近くに手すりを設置しておくと、トイレ室内での移動や立つ、座るなどの動作を容易に行うことができます。
抗菌性が高く、お手入れしやすい床材を選ぶ
トイレの床材に抗菌性の高い素材やお手入れのしやすい素材を選ぶと、床を汚した際の後処理が簡単です。
快適に利用できる設備付きの便器を導入する
便座の蓋を開閉する、洗浄ボタンを押すなど細かな動作は、小さなことですが高齢者には負担になります。蓋の自動開閉、便器の自動洗浄などの機能がついた便器を使用することで日常動作が楽になり、また清潔も保たれます。
その際には、リモコンのボタンを手の届きやすい場所に設置しましょう。
玄関
玄関には、多くの場合段差があります。また靴を脱ぎ履きする姿勢は、高齢者は特にバランスを崩しやすく、事故の原因にもなります。
段差をなくしてスロープにする
段差を解消するために、ゆるやかなスロープを設置しましょう。車椅子の場合は特に、スロープがあればスムーズに出入りができます。
可能であれば、足腰が悪くても楽に家に出入りできる電動式の昇降設備なども検討してください。
スペースの関係でスロープの設置が難しい場合は、踏み台を設けて段差を少なくするなどの対策も有効です。
床を滑りにくい素材にする
雨の日は玄関が濡れて滑りやすくなり、転倒事故が起こる可能性が高くなります。
玄関の床材を水はけや吸湿性の高い、滑りにくい素材に変えることで、転倒リスクを減らすことができます。
手すりや椅子を設置する
靴の脱ぎ履きは、不安定な体勢になります。ベンチを置く、手がとどく場所に手すりを設置するなどして、無理のない動作ができるように工夫しましょう。
階段・廊下
先述の通り、高齢者の室内での事故は、階段でも多く起こっています。また、小さい子どもの落下事故などもあります。階段や廊下は特に、誰でも安全に移動できるようにするための対策が必要です。
手すりを設置する
廊下や階段には、しっかりと掴まれる手すりを設置しましょう。手すりの高さは、主に利用する人の身長に合わせて調整することが望ましいです。
また、手すりを設置すると、想定以上に廊下が狭くなってしまうことがあるので、注意が必要です。手すりの設置前に、きちんと有効な幅を確認しておくことをおすすめします。
廊下の幅を広くする
国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」によると、通路の有効な幅員は85cm以上が理想的です。将来、車椅子を使うことになっても、通行が簡単にできる幅員を確保しましょう。
階段の勾配をゆるやかにする
急勾配の階段は、健康な人でも上り下りが大変です。階段の勾配はゆるやかにし、可能であれば踏面(足を置く場所)の幅も広めに設定してください。
階段に滑り止めをつける
階段を踏み外すと、落下の危険があります。滑りにくい材質を選んだり、滑り止めをつけたりして、事故を防止しましょう。
寝室
寝室のバリアフリーを考える場合、寝室からどこへ移動するのかを基準にバリアフリー化を考えると、誰でも快適に過ごしやすい住宅になります。
トイレを近くに配置する
介護が必要な場合や身体機能が落ちた場合、寝室からトイレまでの道のりが辛くなってきます。
寝室の近くにトイレがあると、夜中のトイレも安心して利用することができます。
その際、足元を照らす照明を設置するとより安心です。
リビングと隣接させる
介護が必要な場合、寝室で寝たままで過ごす時間が長くなることがあります。
リビングと寝室を隣り合わせにすることで、介護を行う人の動線がスムーズになり、負担を和らげることができます。
まとめ
今回は、バリアフリー住宅についての説明、バリアフリー住宅のメリット、バリアフリー化を考えるポイントについて解説しました。
住宅のどこを、どのようにバリアフリー化するのかは、居住者の身体機能や介護をする人・介護を受ける人の状況によって大きく内容が変わってきます。
家族構成や将来のリスクを踏まえ、リフォーム業者などプロの意見も参考にしながら、じっくりと考えていきましょう。
*全国の登録事業者が表示されますので、お住まいのエリアに絞って検索ください。
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