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介護・バリアフリー
更新日:2021年10月07日
バリアフリーとは?言葉の意味や由来を分かりやすく解説
私たちが普段何気なく生活する中で「バリアフリー」という言葉を目にすることが多いと思います。
今回はそんなバリアフリーの意味や仕組み、身近にあるバリアフリーデザインやバリアフリーに関する法律について解説していきます。
この記事を読むことで、普段何気なく見かけるバリアフリーの意味を正しく理解することができ、どのような目的で施設や設備がバリアフリーとなっているのかについて詳しく知ることができます。
バリアフリーとは
本来、バリアフリーは障害のない、境のない、障壁がない…といった意味を持っています。
現在では主に「年齢的特徴、身体的能力、意識的にみられるバリア(障壁)の要素を取り除くことで、高齢者や障がい者でも関係なく、誰もが過ごしやすい環境を整えること」という意味で使われることが多いでしょう。
身近なバリアフリーを例えると、ノンステップバスや点字ブロック、青信号の時に音が鳴る信号機(音響式信号機)など、私たちの近くにはたくさんのバリアフリーで溢れています。
もともとバリアフリーとは、主に施設や建物内の階段の段差などがあてはまる「物理的バリア」を取り除くという意味の建築用語として使われていました。
しかし現在では、私たちの社会の中には多様な人々が暮らしているという観点をもとに、国全体が社会の中のあらゆるバリア(障壁)を取り除く意識を反映させたまちづくりを推進するようになりました。
そのため、施設や建築物の段差という物理的バリアの除去だけにとどまらず、制度面や文化情報面、意識面などにおいてもバリアを取り除くという意味に変わっていったという背景があります。
身のまわりにある4つのバリア
主に高齢者や身体に不自由を抱える方の生活に影響を及ぼすバリア(障壁)は、大きく分けて以下の種類に分けられます。
ここでは、4つのバリアについてそれぞれ詳しく解説していきます。
物理的なバリア
物理的なバリアとは、身体に不自由を抱えた方にとって障害となる物理的(ハード面)でのバリアのことを指します。
たとえば、以下のようなケースが当てはまります。
階段やバスなどの段差、急勾配の坂は、高齢で足腰が弱くなった人にとっては大きな障害(バリア)になります。
また、幅の狭い通路や滑りやすい床、車椅子などに座ったままでは手が届かない高さにあるエレベーターのボタンなどは、車椅子でその場所を利用する人にとって、設備の利用や移動に支障が出ると考えられるでしょう。
これらの物理的移動や生活に支障や障害となるものを、「物理的なバリア」と定義されます。
制度的なバリア
制度的なバリアとは、身体的な不自由や精神的な障がいを抱えていることなどを理由に、受験や資格試験の受験の拒否、企業への就職、サービスの利用拒否などの制限を受けることを指します。
主に、そのルールや制度があることで、障がいや不自由を抱えた人が均等な機会を奪われていることが該当します。
たとえば、以下のような事例は制度的なバリアに当てはまります。
これらの障がいを理由に生活や行動において制限を受けることを「制度的なバリア」と定義されます。
文化情報面のバリア
文化情報面のバリアとは、身体的な障がいがある人が、社会活動を行う上で障壁となるバリアのことを指します。具体的には、視覚に障がいを持っている人にのみ必要な情報が伝わらなくなっているケースなどが当てはまります。
たとえば、以下のような場面は文化情報面にバリアが存在している状態といえるでしょう。
これらの障害によって、社会活動や生活における文化や情報の取得に制限を受けることを「文化情報面のバリア」と定義されます。
文化情報面のバリアを解消するためには、信号機の色がいま何色なのか、エレベーターのどのボタンを押せば目的地に行くことができるのか……などの情報を、視覚に障がいを持っている人でも不自由なく受け取れるための仕組みや工夫が必要になります。
また同様に、テレビの映像が今何を放送しているのか、演説をしている人が何を話しているのかなどの情報を、聴覚に障がいを持っている人でも受け取れるようにする必要があるでしょう。
意識上のバリア
意識上のバリアとは、高齢者や身体・精神に障がいを持つ人などに対する偏見や差別、勘違いなどの障壁のことを指します。「心のバリア」とも呼ばれます。
具体的には、次のようなケースが意識上のバリアがある状態とされます。
これらの障がいを持つ人に対する配慮の欠如や、年齢や障がいを理由に差別や隔離をしてしまう社会や個人の理解の不足を「意識上のバリア」と定義されます。
身近なバリアフリーデザインの例
街中や建物などの施設には誰でも滞りなく生活をできるようなバリアフリーデザインが多く採用されています。
ここでは、私たちの身近にあるバリアフリーを採用している例をいくつか紹介します。
スロープ
横幅が十分に確保されておりなおかつ傾斜が緩やかなスロープを採用することで、足を思うように動かすことが困難な人や車椅子を使う人などが、階段の段差を乗り越えることなく移動が可能になるメリットがあります。
点字ブロック
点字ブロックは、視覚に障がいを持つ人が白杖や足の触覚で安全な移動を行えるようにするために設置されています。商店街や歩道、駅、公共施設など、至る所で採用されているため、目にする機会も多いでしょう。
点字ブロックを使用することで、視覚に障がいがある人でも、歩行時に安全な場所と注意や誘導が必要な場所を把握することができます。
正式名称は「視覚障害者用誘導ブロック」と呼び、誘導ブロックと警告ブロックの2種類に分類されます。
誘導ブロック
誘導ブロックは縦型の線状に突起のあるブロックで、突起の方向に進むことを誘導するブロックです。
誘導ブロックを利用することで、進行する方向を迷うことなく進むことができます。
警告ブロック
警告ブロックは点状の突起のあるブロックで、危険箇所や誘導を必要とすることを示すブロックです。
警告ブロックの設置される場所は、誘導ブロックが交差する場所や駅のホームの端、階段やエレベーターの前、施設の受付や出入り口に設置されます。
音響式信号機
音響式信号機とは、信号が青になっていることを音声やメロディ等で知らせて、視覚に障がいを持った人でも進行と停止を判断できるよう設計されている信号機のことです。
現在の信号の色を音で知らせるだけではなく、歩行者が音を頼りに横断歩道をまっすぐ進むことができるようサポートする役割も担っているという特徴があります。
また、これ以外にもバリアフリーの観点が採り入れられている信号機は多く見られます。
たとえば、ボタンを押すことで通常よりも歩行者側の信号が青に変わるまでの時間を短縮しつつ、歩行者側が青になる時間を伸ばせる信号機や、音響装置と押しボタンの両方が採用されている信号機もあります。
エレベーター
私たちが普段何気なく利用しているエレベーターもバリアフリーデザインのひとつです。
エレベーターは階段の昇降をせずに高低差のある移動を行ってくれる設備のため、車椅子を使う人や歩行が困難な人が移動の負担を減らせるメリットがあります。
また、車椅子の方でも利用がしやすいように中のスペースが通常よりも広くなっているものや、車椅子利用時でも押しやすいように、通常よりも低い位置に開閉ボタンや階数ボタンを設置しているエレベーターもあります。
さらに、視覚に障がいのある人でも利用しやすいようにボタンの機能を点字で説明するエレベーターや、到着時に「◯◯階です。」と音声案内が入るエレベーターもあります。
多目的トイレ(バリアフリートイレ)
多目的トイレ(バリアフリートイレ)は、車椅子利用者やオストメイト(人工肛門等保有者)、小さな子供を持つ親などでも安心かつ快適に利用できる設備があるトイレのことを指します。多機能トイレとも呼ばれます。
主に駅や商業施設、公共施設などで見かけることができます。
車椅子の方でも快適に利用できるよう室内スペースが広くとられており、より安全に利用するために手すりが付いていることが多いです。
また、オストメイト(人工肛門等保有者)が排泄するときに使用する流し台や、小さい子ども連れた親が子どもを座らせるためのベビーチェアを設置している場合もあります。
これらの機能により、通常のトイレの利用が難しい方でも多目的トイレであれば安心して利用することができます。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーと似た概念に、ユニバーサルデザインというものがあります。ここでは、バリアフリーとユニバーサルデザインの違いについて解説していきます。
ユニバーサルデザインとは何か
ユニバーサルデザインとは、年齢や障がい、性別、体格、国籍、言語、などに関わらず誰もが使用しやすくわかりやすい設計になっている製品や情報のことを指します。
ユニバーサルデザインはアメリカのロナルド・メイス教授が提唱したものが由来となっており、以下の「ユニバーサルデザインの7原則」に基づいた機能を持つ設備や施設などが当てはまります。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーとユニバーサルデザインには共通する部分がありますが、目的が異なります。
バリアフリーは、身体的に障がいのある方でも使いやすい・生活しやすいためのデザインであることに対して、ユニバーサルデザインは国籍や言語、性別も含めており、使用上での利便性や省力性なども含まれています。
機能として使用することを目的とするバリアフリーと、利便性や認知のしやすさを追求するユニバーサルデザインでは共通点も多いですが、根幹にある目的は違うものということになります。
バリアフリーに関する法律
政府は、バリアフリーに関する数々の法律を制定することで、社会の中で急速にバリアフリー化を加速させました。ここでは、具体的にどのような法律が制定されてきたのかを紹介します。
ハートビル法
日本で最初に施行されたバリアフリーに関する法律が、1994年に施行されたハートビル法です。
ハートビル法は、不特定多数の人が利用する建物や、障がい者や高齢者が利用する施設において、エレベーターや駐車場、出入り口やトイレなどをより使用しやすくできるようなバリアフリー化を促す法律です。
ハートビル法は施設や建物などに限定されて制定されています。
バリアフリー法
2000年に施行されたバリアフリー法は、特定の施設や設備のみではなく、障がい者や高齢者が円滑に移動できることを目的として作られた法律です。
このバリアフリー法では、エスカレーターやエレベーター、スロープ、点字を使用した設備など、障がい者や高齢者が移動するために必要な設備の案内を定めました。
ハートビル法とバリアフリー法のふたつの法律の制定により、障がい者や高齢者でも移動がしやすい社会が実現されました。
高齢者、障がい者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)
バリアフリー新法とは、旧バリアフリー法やハートビル法で定められたものを更新する形で、情報や文化、国民の高齢者・障がい者の理解など、幅広い分野でバリアフリーを新たに定義した法律です。
高齢者・障がい者にとってのバリアとなる4つのバリアを無くすことが要件として追加され、あらゆる面で高齢者・障がい者が生活しやすい社会を目指して作られた法律の内容となっています。
バリアフリー法では、施設の新設に際してどのようなバリアフリーの要件が必要となるか、既存の施設がどのような設備を最低限備えなければならないかなど、詳しく記載されています。
まとめ
今回は、バリアフリーという言葉の意味、身の回りにあるバリア、身近にあるバリアフリーデザインなどを解説しました。
バリアフリーは今や障がい者や高齢者だけに当てはまるものではなく、年齢や障がいによるバリアを感じていない世代の意識の変革も必要な時代へと変化しています。
この記事がバリアフリーの視点を採り入れた住まいづくりを意識するきっかけになれば幸いです。
(2021年9月16日掲載)
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