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更新日:2024年12月17日

実家がゴミ屋敷化!? 親が元気なうちにリフォームで解決する方法! NEW

掲載日:2024年7月30日

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お盆や年末年始の休みを利用して実家に帰省する方は多いと思います。
しかし、実家に帰省するたびに古くなった家電製品や、古着などが家中に溢れているのを見て、ストレスに感じることはないでしょうか。
また、高齢となった親がそれらを片付けられずに放置していることに不安を覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、実家にモノが溢れていたり、その中で暮らす高齢の親の暮らしについて不安がある方へ「リフォーム」で解決する方法をご紹介します。
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帰るのが憂鬱になる実家の問題点

1. 親がモノを溜め込みすぎて実家がゴミ屋敷化していく
私自身も実家に帰るたびに、もとは子供部屋だったスペースがどんどん倉庫化していたり、年老いた親が不用品を捨てられず、使われなくなった部屋に、ため込み続けているのを見て「使わないなら早く捨てようよ!」と会うたびに説得していました。

しかし、「そのうちね」とはぐらかされ、そのうちにお互いがイライラしてきて険悪なムードになるというパターンを繰り返していました。
実際、タンスの上に積み上げられているモノが、地震の際に落下してくる危険だってあるし、床にモノが積まれていたら逃げるときに転倒して大けがをする可能性だってあるわけです。子供の立場としては、心配して何度も言っているのに聞き入れてもらえず、帰省するたびに憂鬱な気分になりました。
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2. いつ怪我をしてもおかしくない危険地帯!
本来、家の中は安全であるべきですが、実際には急な階段や部屋ごとの段差、複数の家電の電源になっている「たこ足配線」などがあり、転倒や火災のリスクがあちらこちらに潜んでいます。また、両親二人だけで住む家としては広すぎたり、部屋が細かく分かれているため、掃除するのも大変で、足腰や反射神経が年々衰えていく親にとっては、リスクが高まる一方です。
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株式会社大工タカハギのリフォーム事例

実家の問題解決に「リフォーム」が有効なわけ

1.モノを捨てたり、片づけたりする“きっかけ”になる
たしかに、長年溜め込まれたモノをいきなり「捨てて!」と言われても、素直に捨ててくれる親は少数派だと思います。モノを大事にしてきた世代ですから、「まだ、使えるから」「いざというときに役に立つ!」といった気持ちがブレーキになっていたと思います。
そんなとき、いきなり「捨てて!」とお願いするのではなく、「掃除や片付けの面倒から解放されるよ」といった感じで、ストレスフリーな暮らしをイメージしてもらうのが有効です。普段の生活の中で起きる怪我の可能性や、地震や火災から身を守る手段として「造り付けの家具の設置」や「たこ足配線」をやめてすっきりした空間で快適に過ごすイメージを持ってもらい、「もしリフォームするとしたらどんな感じにしたい?」という具合に親と一緒に仮のリフォーム計画を立ててみてはいかがでしょうか。そうして、少しずつ計画が進むうちに「この家電や衣類は理想の暮らしに本当に必要か?」「自分がいなくなった後、誰がこれを引き取ってくれるのか」と考えはじめると、勝手にモノが片付き、不用品が処分されていきます。
新しい暮らし方を親子で一緒に考えるということは、ポジティブでワクワクする話ですし、これからの生活について家族で話し合う良いきっかけになると思います。

<チェックポイント>
親自身に、モノの量の多さを自覚してもらうために、家じゅうの写真を撮って、モノの総量を知ることから始めてみましょう!
写真に撮ることで、客観的に見ることができ、不要物を整理するする覚悟が芽生えてきます!
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出典:厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」

2.家全体の安全性が向上する
足の踏み場もないほどモノで溢れていた家をリフォームすることで、転倒のリスクを大幅に減少させることができます。視力や筋力が衰えた高齢者でも、安心して暮らせる家に生まれ変わります。
さらに、窓や玄関などの開口部も一緒にリフォームすれば、屋内の温度差が解消され、脱衣所や浴室、トイレでのヒートショックの可能性を減らせて、健康寿命も延びるという効果も期待できます。
特に、「たこ足配線」の解消や「造り付け収納の設置」、そして「窓改修」は、家の安全性を高めるためにも優先して取り組んでいただきたいリフォームです。
3.設備交換は“元気なうちに”
お風呂やトイレ、キッチン、給湯器といった老朽化した設備の交換も、元気で動けるうちにやっておくべきです。親が高齢になってくると「いつまで生きるかわからないのにお金をかけたくない」と言って、そのまま我慢して使い続けることになります。反対に、早めにリフォームをすると「せっかくリフォームしたんだから、長く住まなきゃ損だな」と前向きな気持ちが芽生えてきます。
つまり、リフォームは、親が元気なうち済ませておく方が絶対に良いと思います。私の家の場合も「まだ、使えるし大丈夫かな」と実家のトイレや洗面所の改修を先送りにしていたところ、突然、母親が眩暈(めまい)を起こして転倒してしまい、そのとき、頭と足を強打して、そのまま最期まで寝たきり生活となってしまいました。こうなってしまうと、リフォームすることは簡単ではありません。
体や頭を洗うのにも水が必要になるため、老朽化した離れた洗面台から重い水を汲んできたり、ヘルパーさんが介護できるスペースをベッドの回りにつくるため、部屋のモノを捨てて片づけなくてはならないといった具合で大変でした。
まだ親が70代くらいで元気だと「バリアフリーなんてまだ必要ない」「老後の対策なんてまだ先の話し」と思われるかもしれませんが、骨折や大病をして動けなくなってからリフォームを始めるのは本当に大変です。
介護が必要になった本人はもちろん、体の自由がきかなくなった親をモノだらけで、段差が多い家で介護するのは、介護する側にとっても大きな負担になります。
私も、母が転んで寝たきりになる前にリフォームしていたならと今でも後悔しています。転ぶ前にリフォームできていたら、軽い打撲程度で済んでいたのでないか、寝たきりになる時期をもっと先に延ばせたのではないか。そう思うと悔しくてなりません。皆さんには、親が元気なうちに、安全な生活環境を早めに整えられることをお薦めいたします。
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施工:有限会社 吉次商店 「寝室の押し入れをトイレにリフォームした事例」

“未来のリスクに備える”リフォームポイント

①「寝室」と「トイレ」の距離を近づける
寝室の近くにトイレがあることで、自力でトイレに行ける期間が長くなるか、短くなるかが決まります。
夜中に1階のトイレに行くために2階の寝室から階段を下りるのは、足腰が弱く なっている高齢の親にとって非常にリスクの高い行為です。
可能な限り、寝室の近くにトイレを配置し、トイレを壁で囲まずオープンなスペースにすると、介助が必要になった後も、圧倒的にやりやすくなります。  
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②トイレと浴室の距離を近づける
介助する側にとっても、トイレから離れた浴室へ移動するは本当に大変です。
もし、現在の家がトイレと浴室が離れている場合は、2つの設備を近づけることで、汚れた体をすぐに洗い流せるので便利です。
また、床材は、滑りにくく掃除しやすい素材を選ぶことをお薦めします。
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③洗面ボールを2つ設置する
洗面ボールが2つある洗面台を設置すると、他の家族が使用したいときに同時に使えますし、下部に脚が入るスペースを作っておけば、将来、車椅子になったとしても、自分で歯磨きや洗顔ができるため安心です。
また、洗面ボールが2つあれば、一つは汚れた衣服のつけおき洗いや、掃除用具の洗浄などにも使えるので助かります。このようにしておくと、より長い間、ほかの人に介助させず自立した生活ができるため家族みんなが安心です。

リフォーム向けの助成制度

今回ご紹介したリフォームには、国や各自治体などから、さまざまな助成金や税制度優遇が用意されています。
とくに、高齢者向けのリフォーム助成には、どの自治体も力を入れていますので、リフォームをする前に、住宅リフォーム推進協議会や、各自治体のサイトを見ておくと良いでしょう。
助成制度を利用する際の注意点としては、地震や火災に対する防災や省エネ、バリアフリーなど各分野に対して助成金が出ているのですが、これらを利用する場合は、リフォームをする前に申請が必要になる場合がほとんどです。
リフォーム会社に予め、助成制度を利用できるか、その対応をしてもらえるかといった確認が必要です。
また、すでに介護認定を受けている人の場合は、担当のケアマネージャーに介護保
険に基づくリフォームについて相談してみてください。
例えば、バリアフリー改修、手すりの設置、段差の解消、スロープの設置、トイレの改修など補助対象となるリフォーム工事の種類について、詳しく説明してくれます。

まとめ

今回は、モノがあふれて片付かない実家の問題を解決する手段としてリフォームをお勧めしました。

・「親が元気なうちに理想の暮らし方について話し合う」
・「親が自立して過ごせる期間を長くすることを共通目的とする」
・「家じゅうにあるモノの総量を知り、不用品を処分する」
・「万一、介護が必要になっても慌てずに対処できる生活環境にする」

最期にこの記事を読まれた方が、私のように後悔したりすることがないよう、実家の問題から解放され、心穏やかに過ごせる暮らしが手に入れられますよう心から祈りつつ、終りにしたいと思います。
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◆執筆者 玉上陽一
ハウスメーカーで営業、商品開発、マーケティング、ブランディングに携わった経験を活かし、消費者視点と事業者視点の2つの視点で快適な住まいのあり方について解説します

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