空き家を「利活用」する? あきらめる?

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空き家を「利活用」する? あきらめる?

掲載日:2023年10月6日

意図せず、自分は住むことはないであろう「空き家」を相続してしまった・・・。「空き家の有効利活用」が推進されているいま、できれば文字通り「利活用」できればいいのですが、あえて「利活用」はあきらめて、解体、更地にする方がいいかも・・・ということもあります。

本稿では、リフォーム評価ナビを運営している一般財団法人住まいづくりナビセンター専務理事の河田崇が、空き家を利活用するか、しないかの「見極め」を行う際のポイントについてご紹介します。

突然の「相続」・・・

親が亡くなり、親が所有していた住まいの相続が発生した場合、相続人が1人のみであるなど、単純であれば、すぐに、相続した不動産の活用・処分の検討に進むことができますね。

ところが、なかなか単純に進められないことも多く、後継者として兄弟姉妹がいれば、「で?誰が相続する?」という「親族会議」から始めなくてはいけません。まず、この時点で揉めることもあるでしょうし(場合によっては骨肉の争いに・・・)、円満に決着がついたとしても相当な時間がかかったりします。そして「空き家」状態が続くことになります。

空き家を発生させないためには?

そうならないためには、親御さんが生存中に、この住宅は誰が相続するか?あらかじめ決めておくことが理想です。そうすれば「空き家」の状態が長期間になることを回避できるのではないでしょうか。

でも、なかなか難しいですよね。親が元気なのに、そういった相談をすることって・・・ちなみに、遠方に住んでいる私の親の住宅を、兄弟姉妹の誰が相続するのか?何も決まっていないし、相談すらしたことがありません。(涙)

さらには、突然、司法書士事務所から「この土地と空き家は、あなたも相続人の一人なんですが・・・」と封書のお手紙が届いてびっくりすることもあります。親子のみならず親族も含めて、不動産の所有関係は、常に明確にしておきたいものですね、理想的には・・・

「幸」か「不幸」か? 住宅を相続して・・・

いろいろと相続に関するハードルはクリアして、あなたが単独で住宅を相続したとします。(「相続してしまった」と感じる方も)

さあ、次はどうするか?「空き家をリニューアルして賃貸して家賃収入!」とか、「おしゃれなカフェに改装して・・・」など、素敵な事例、成功体験がテレビ番組で放映されていたりします。SDGs的にも非常に素晴らしいことだと思います。夢は膨らみますね。

今の住まいの性能と比較すると

でも、すぐに「活かす」ことを考える前に「活かすことが、そもそもできるのか?」といったん悩み、調べることが大切ではないかと思っています。

日本の住宅は、この2~30年で飛躍的に性能が向上しました。昭和の頃の住まい、木造1戸建を思い出してみると、

・住宅を支えるコンクリート基礎に鉄筋が入っていない
 → 今は、鉄筋を入れないと法律違反
 
・壁や床に断熱材は入っていない
 → 今は、高性能な断熱材がギッシリ入っている
 
・窓は1枚ガラス 
 → 今は、複層ガラス(二重ガラス)
 
・和室と廊下に、畳の厚さ分の段差あり
 → 今は、段差無しのバリアフリー
 
・冬は、すきま風 
 → 今は、建材の性能アップや施工精度向上で皆無

耐震性、断熱性などは大丈夫なのか?

例えば、キッチン、フローリングなどの内装、給湯器などの設備機器は、最新鋭のものに交換すれば、性能も見栄えも格段によくなります。一方で、耐震性能や断熱性能など、目に見えない隠れた箇所で確保する「住まいの基本性能」も大切です。・・・というか、こちらの方を重視すべきです。

基本性能の確認をしないまま「空き家の利活用」をして、現代の住まいに慣れ親しんだ人に賃貸で入居してもらっても、耐震性に不安を抱えたままだったり、あまりの断熱性能の悪さ(電気代にも影響しますね)などで不満がでてくるのではないでしょうか。

耐久性、耐震性、省エネ性能などが優れた長期優良住宅がスタンダードになりつつある今、空き家をリニューアルして、現在の住まいの基本性能にどこまで近づけることができるかは、利活用したあとも「永く」使っていくための大切なポイントだと思います。

国土交通省では、リフォームをして長期優良住宅水準に基本性能を高めることを支援する「長期優良住宅化リフォーム補助制度」を実施しています。(注 2023年度)

基本性能の確認と、アドバイスは専門家から

では、空き家の耐震性能や断熱性能などは、目で見ればすぐわかるか?そうではありませんね。住宅の内部・構造躯体(くたい)を確認しないと判断することはできません。一般の方では限界があるので、専門家に依頼することを検討しましょう。
基礎、外壁などに生じているひび割れ、雨漏り等の劣化具合などを調査する建物状況調査(インスペクション)も含め、若干、時間とコストはかかりますが、しっかり「診断」しておくことをお薦めします。
専門家から「診断結果」が出たとします。ただ、この際に単純な○×のみでは、今後、リフォームして利活用すべきか、あきらめるかの判断は難しいかと思います。できれば、

  • 解体した方がいい(性能確保のためのリフォームに莫大なコストがかかりそう)

  • ある程度、性能向上リフォームをすれば利活用可能(でも、コストはウン百万円程度・・・)

  • 基本性能は十分あるので、比較的容易に利活用可能
・・・以上のうち、どの結果なのか、信頼できる専門家から、より具体的なアドバイスがもらえると、この後、進めていくうえで少し自信がつくはずです。

「古民家」としての価値があれば・・・

なお、一方で、「基本性能の有無」とは別の切り口で、その空き家に大きな価値があるケースがあります。例えば建築後60~70年以上経過している伝統的な価値、風格のある古民家、今では流通していない「古材」を利用している・・・といった場合です。

利活用していない古民家を所有しているけれど、今後どうしていけばいいのか解らないといった場合には、国土交通大臣登録住宅リフォーム事業者団体の一つである、一般社団法人 全国古民家再生協会 に相談してみることをお薦めします。

◆執筆者
一般財団法人住まいづくりナビセンター 専務理事 
河田 崇

元 独立行政法人 住宅金融支援機構 部長
工務店向けの省エネ基準解説書や木造住宅工事仕様書の作成などに従事
マンション管理士 建築基準適合判定資格者 2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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