介護保険を上手に使って安全な住まいに住宅改修をしよう

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介護保険を上手に使って安全な住まいに住宅改修をしよう

掲載日:2022年8月25日

高齢者は加齢と共に身体に変化が生じます。そのため、自宅で安全に住むのが難しくなり、手すりの取付けや段差の解消など、リフォームが必要となるケースがあります。こうした住宅改修については、介護保険でリフォーム費用の一部が支給される制度があります。
今回は介護保険を使った住宅改修に関する基本から利用の流れまでを、わかりやすく解説します。

住宅改修のメリット

加齢に伴う心身の変化によって、日常生活が困難になってくるケースも少なくありません。しかし、住宅改修を行うことで、自立した日常生活を送りやすくなり、転倒等による怪我を防ぐことができます。また、介護する方の負担を軽減することにもつながります。

生活しやすい環境を作ることができる

高齢になると、誰しもが段差でつまずいたり、立ち上がりが困難になってきたりします。段差を解消したり、手すりをつけたり等の住宅改修を行うことで、住宅の中を安全に移動できるようになり、自立した日常生活を送りやすくなります。本人の意欲の向上にもつながるでしょう。

介護の負担が少なくなる

介護する人の視点も大切です。住宅改修によって介護をしやすい環境にできるので、家族や介護者の負担やストレスの軽減につながります。

介護保険を利用して住宅改修をするメリット

介護保険を利用して住宅改修を行うことで得られるメリットは、以下の2点が挙げられます。

費用を節約できる

住宅改修にはもちろん費用がかかりますが、介護保険を利用することで住宅改修費の9割相当額が支給されるため、費用負担の不安を和らげ、必要な改修を検討することができます。(ただし、支給限度基準額は20万円となります)

保険適用される改修工事のみを選んで行うことができる

大掛かりな改修工事は望まなくても、「手すりを取り付ける」、「開き戸を引き戸に交換する」といった介護保険法の適用範囲だけで改修を行い、お住まいの安全性、利便性を高めることも可能です。
介護保険制度で改修費が支給される工事については以下でご案内します。

介護保険の支給対象について

■介護保険制度で改修費が支給される対象工事
項目 内容
①手すりの取付け 廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路等への手すりの取付け
 ※対象外:固定されていない家具への手すりの取付けなど
②段差の解消 廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路等の段差の解消 
※対象外:昇降機、リフト、段差解消機を設置する工事など
③滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 居室における畳から板製床材等への変更
浴室やトイレにおける滑りにくい床材への変更など
④引き戸等への扉の取替え 開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテン等に取替え
扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置など
⑤洋式便器等への便器の取替え 和式便器を洋式便器に取替え(洗浄機能、暖房機能等の付いた洋式便器も可能)
※対象外:洋式便器から洗浄機能付洋式便器への変更など
⑥その他①~⑤の工事に
付帯して必要となる工事
手すりの取付けのための壁の下地補強
浴室の床の段差解消に伴う給排水設備工事など
 
介護保険において費用が支給される改修工事は、①手すりの取付け、②段差の解消、③滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料への変更、④引き戸等への扉の取替え、⑤様式便器等への便器の取替え、⑥その他①~⑤の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修となります。
 
このうち、①と②については廊下やトイレ、浴室、玄関、さらには玄関から道路までの通路などに、転倒予防や移動を手助けするために手すりの設置や段差の解消工事を行う場合に支給対象になります。
 
③は、畳敷きの居室をフローリングやビニル系の床材に変更する際や、浴室や通路面の床材を滑りにくいものに変更する工事などが対象となります。

④は開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える工事や、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置などに対して改修費の一部を支給します。

⑤は和式のトイレを洋式トイレに取り替える費用が対象です(洗浄機能、暖房機能などの付いた洋式便器も可。ただし、洋式便器から洗浄機能付洋式便器への変更などは対象外です)。

最後に⑥については、手すりの取り付けのために行う壁の下地補強工事や、浴室の床の段差解消に伴う給排水設備工事などが対象です。

介護保険の支給限度基準額は20万円

住宅改修費の支給対象となる住宅は、要支援1.2、要介護1~5と認定された方が居住している住宅となっています。被保険者証に記載されている住所の住宅のみが対象となります。

支給される費用の支給限度基準額は20万円ですが、1割は自己負担となりますので実際には18万円が支給額の上限になるので注意が必要です。

介護保険を複数回利用できるケースもある

住宅改修のために利用できる介護保険は20万円が上限ですが、状況次第では複数回利用することも可能です。具体的にどのような場合に利用できるのかをご紹介します。

限度額を超えていない場合

支給限度基準額の20万円までであれば複数回に分けて利用することが可能です。身体の状態の変化に合わせて利用しましょう。

本人の要介護状態が著しく重くなった場合

要介護度が上がると、さらに住宅改修をしたい箇所が増えてくるでしょう。介護保険では、介護が必要な程度の段階(要介護状態の区分)が3段階以上重くなると、同じ申請者でも再度20万円まで利用できます。例えば、要支援2であった方が要介護4になると、再び20万円までの利用が可能になります。

新しい家に引っ越した場合

住宅を転居した場合も、新たに行った住宅改修に対して介護保険により上限20万円まで支給してもらうことができます。なお、転居前の住宅について支給限度基準額の残額があっても、転居後の住宅については持ち越されず、上限20万円の支給となります。

介護保険を利用した住宅改修の流れ

介護保険を利用した住宅改修をご検討されている方のために、具体的な流れをご紹介します。

ケアマネジャーに相談・施工業者の選定・改修内容の決定

居宅サービスを利用している方は、まずは担当のケアマネジャーに相談してください。居宅サービスを利用していない方は、お住まいの地区の地域包括支援センターに相談してください。

ケアマネジャー等が「住宅改修が必要な理由書」を作成します。「住宅改修が必要な理由書」には、身体状況や介護状況、改修の目的と期待する効果などが記載されています。

その後、複数のリフォーム会社に見積依頼をして、リフォーム会社を選定しましょう。改修内容は、本人や家族、ケアマネジャー等と相談しながら決定します。

市区町村の役場へ申請する

工事の着工前に、市区町村の役場へ必要書類を提出します。

必要となる書類は以下の通りです。
・住宅改修費支給申請書
・住宅改修が必要な理由書
・工事費の見積書
・住宅改修後の完成予定の状態がわかる資料(写真または簡単は図を用いたもの)

自分で書く必要があるのは、「住宅改修費支給申請書」になります。

「住宅改修が必要な理由書」はケアマネジャーをはじめ地域包括支援センターの職員や理学療法士などの資格を持つ人のみが作成できる書類です。

「工事費の見積書」と「住宅改修後の完成予定の状態がわかる資料」は、住宅改修をしてもらう施工業者に作成してもらいましょう。必要な書式や詳しい記述方法はお住まいの地域の役場にてご確認ください。

なお、住宅の所有者が本人以外の場合は、上記に加えてすべての所有者からの承諾書も提出する必要がありますので注意してください。

工事実施・施工業者に費用を支払う

住宅改修を実施後、まず工事費用を自身が負担して支払う必要があります。介護保険は「還付払い」といって、対象となる工事費用の全額をいったん施工業者へ支払い、申請により後で規定の額が払い戻される仕組みになっています。一旦全額負担する必要がありますので、そこは注意しましょう。

なお依頼する施工業者によっては、「受領委任払い」に対応している場合もあります。これは住宅改修費のうち保険適用分(全体の1~3割程度)だけを施工業者に支払うことができるもので、利用者の一時的な費用負担が軽くなります。ただし、必ずしもすべての施工業者が対応しているわけではないので気をつけましょう。

市区町村の役場で払い戻し手続きをする

市区町村の役場で払い戻しのための手続きを行いましょう。

必要書類は以下の通りです。
・住宅改修費用の領収書
・工事費内訳書・住宅改修の完成後の状態が確認できる書類(便所、浴室、廊下等の箇所ごとの改修前及び改修後それぞれの写真とし、原則として撮影日がわかるもの)

住宅改修をする際の注意点

最後に住宅改修をする際に、覚えておくべき注意点をご紹介します。

見積書は複数の施工業者に出してもらう

施工業者に見積りをする際は、必ず複数の施工業者に依頼するようにしましょう。施工業者によって使用する物品が異なるため、見積額も変わってきます。
また、最も大切なことは信頼できる施工業者であることです。担当者とやりとりして実際に会い、価格だけではなく信頼性や相性などから選びましょう。

介護保険以外の補助制度の活用も検討する

各自治体では、独自に住宅改修費に対して補助金を支給する制度を設けている場合があります。ただし、支給条件や支給額などは自治体によって異なるため、各自治体にご確認ください。
様々な制度を上手に活用しながら、費用をおさえて安全な住まいを手に入れましょう。

地方公共団体が実施する住宅リフォーム支援制度は、以下のサイトからご確認いただけます。

まとめ

加齢とともに、どうしても様々な不便な場所や危険な要素が自宅に出てくるものです。まずはケアマネジャー等に相談し、介護保険も活用して住宅改修を行い、住み慣れた自宅に安心して住める環境を整えましょう。

*全国の登録事業者が表示されますので、お住まいのエリアに絞って検索ください。

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