資産としての住宅にするには④-住宅のコンディションの把握から始める-
中古住宅を購入する時、自宅をリフォームする時、または不具合があることに気が付いた時、その住宅を購入して良いのか、住み続けて良いのか、不安に思うことがあると思います。ひと昔前なら近所の大工さんに診てもらっていたのでしょうが、今ではいろいろな方法で建物のメンテナンスやリフォームを行うことができるようになりました。まずは、工事を行う前に、建物の状態の把握から始めましょう。
住宅には品質の差がある
家が完成し引渡しが行われる時、今後のメンテナンスについてなかなか考える余裕はありません。支払いや手続き、家具やカーテン、引越しなどと考えることが目白押しです。建物を維持していくことの大切さは頭では分かっているのですが、工事会社からメンテナンスのことを詳しく聞きとることができないまま、長く暮らしている住宅も少なくありません。一方、設計段階からメンテナンスのことを確認していたり、計画表に基づいてメンテナンスが定期的に行われている住宅もあります。
また、住宅の品質は、経年劣化だけではなく、欠陥の有無や、建物の仕様により性能に違いがある点も確認しておきたいところです。建物の仕様、建てられた年、メンテナンスがどのように行われてきたかで、住宅一棟一棟の品質は大きく異なり、暮らし方にも大きく影響してくるのです。
家の状態を知ることが資産価値向上に繋がる
建物の構造は大丈夫なの? これは雨漏りなのだろうか? 外壁の塗り替えはいつ頃したら良いのか? わからないことがわからない?
・・・現在の家はどのような状態なのでしょうか。
住宅のコンディションを把握することを、建物状況調査(インスペクション)と言います。信頼できる専門家に建物を診てもらいアドバイスを受けることで、計画的なメンテナンスや建物の性能を向上させるリフォームの検討を行うことができます。そして、メンテナンスやリフォームを実施した際の工事内容などを履歴情報として保存することで、住宅の長寿命化の実現が可能になり、資産価値の向上へとつながります。
では、インスペクションとは、どのようなことを行うのでしょうか。
インスペクションは、大きくは3つに分類することができ、住まい手が何を目的にしているかで診断方法も異なってきます。
●一次的なインスペクション
目視等を中心とした非破壊による現況調査を行い、構造安全性や日常生活上の支障があると考えられる劣化事象等の有無を把握しようとするもの。
(既存住宅の現況把握のための基礎的なインスペクションであり、既存住宅売買時の建物検査や住宅取得後の維持管理時の定期的な点検等。)
●二次的なインスペクション
破壊調査も含めた詳細な調査を行い、劣化事象等の生じている範囲を特定し、不具合の原因を総合的に判断しようとするもの。
(現に、日常生活上支障が生じている場合など不具合箇所を修繕しようとする際に利用されるインスペクションであり、漏水調査や耐震診断等も含む。)
●性能向上インスペクション
リフォームの実施前後に現況調査・検査等を行い、住宅の劣化状況と性能を把握しようとするもの。
(住宅の性能向上リフォームを実施する際に利用される。断熱検査等。)
一般的に行われているインスペクションは、一次的なインスペクションのことをいいます。
インスペクションの流れ
一般的なインスペクションを行う事業者の場合、申し込みから実施までの流れは次の通りです。
1:事業者に電話またはホームページより問い合わせ。
診断内容や料金を確認しましょう。料金は事業者や調査内容により幅がありますが、5万円~ 費用が発生します。
2:インスペクションを申し込み、希望の調査日時を決める。
(既存住宅の購入時は、インスペクションに対する住宅所有者及び居住者の承諾や調査当日の立会人の連絡先等を伝えることが必要になります。)
3:住宅の基本的な情報(所在地、建物構造等)や平面図、立面図など必要な書類等を事前に送付。
4:調査日にてインスペクションを実施。
インスペクションは、主に非破壊の目視調査になります。壁や天井の中、移動できない家具等により隠れている部分等、見ることができない部分がどうしてもあるので、確認できる範囲で建物のコンディションを把握していきます。所用時間は調査内容によりますが、3時間程度~ かかります。
主な調査対象は、次の通りです。
・外部(基礎、外壁・軒裏、屋根、バルコニー)
・室内(天井、内壁・柱、床)
・屋根裏(小屋組・梁)
・床下(土台・床組、基礎)
・設備(給湯、給水、排水、換気)※オプションの場合もあります
当日、診断結果とともに補修やメンテナンスのアドバイスの説明を受けることができるので上手に活用しましょう。
(既存住宅のインスペクションは、通常、中古住宅の購入の契約前に、買主の立会いのもと実施されます。)
5:調査結果報告書の交付。
6:料金のお支払い。
インスペクションを依頼する
インスペクションは、第三者の立場で住まいの診断を行い報告することに意味があります。そして調査した担当者から直接、調査の内容の説明を受け、建物の現状を把握することが大切な点です。依頼する時、下記の点を確かめましょう。
●業務内容
現況検査の実施方法、検査対象とする箇所・部位、劣化事象等の説明を受け、確認しましょう。
●調査者
宅地建物取引業法の一部改正によって、2018年4月からの既存住宅購入時の重要事項説明書等の対象となるインスペクション(建物状況調査)は、建築士の資格を有した既存住宅状況調査技術者が行うことになりました。既存住宅購入時以外の場面で行われるインスペクションも、既存住宅状況調査技術者が中心となり調査を行うことになるでしょう。このことも含め、調査者の資格の有無の確認をしておくと良いでしょう。
●検査業務や検査結果に係る留意事項
契約内容や留意事項等に関する適切な説明を受けましょう。専門用語を使わずに、わかりやすく説明しているかポイントとなります。
●実績
建物の状態は構造や経年によりさまざま。保有資格だけで判断せず、経験や実績を重視することも大切です。
執筆者情報
中野 健さん/一級建築士、建築性能評価員、ホームインスペクター、既存住宅状況調査技術者 ほか(住まいのナビゲーター)
戸建て設計業務のほかに、ホームインスペクション建物診断業務でも活躍。2014年より一般財団法人住まいづくりナビセンターの住まいのナビゲーターとして住宅相談、セミナー講師を担当。
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